コックピット日記

「コックピット日記」は5人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。

Captain 157 「787」の機長として文=今森 進介(ボーイング 787 機長)

読者の皆さま、こんにちは。
この4月で、JALボーイング787が飛び始めてから5年を迎えます。就航地は当初、ボストン、デリー、モスクワ、北京の4都市でしたが、今ではサンディエゴ、ヘルシンキ、クアラルンプールなど、20都市を超えています。今回は、私が実感する787の特徴についてお話しします。

 787の機体には「-8(ダッシュエイト)」と「-9(ダッシュナイン)」の2種類があります。幅はどちらも60.1mですが、全長は「-8」が56.7m、「-9」が62.8mと、「-8」は横長で「-9」は縦長の形をしています。「-8」はJALが保有するジェット旅客機の中で唯一、横長の形をした航空機なので、遠くからでも見分けることができるかと思います。また、客室の窓の数にも違いがあります。主翼よりも前、1番目と2番目のドアの間にある窓の数が「-8」よりも、「-9」の方が多くなっています。
 さて、私は787の機長になる前777に乗務していました。実は、777-200と787-9の幅や全長はほぼ同じ大きさなのです。そのため、787に移行してきた当初から、地上走行の取り回しなど違和感なく操縦できました。一方で、日々の乗務の中で787の特徴を実感することがあります。
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 1つ目は、機体の高さです。一見、777と787は同じ高さに見えるのですが、わずかながら787の方が低くなっています。フライト前の外部点検で、身長173pの私が胴体下面をくぐる際、777は普通に歩いて通り抜けることができましたが、787では少し屈まなければなりません。高さが低い分、貨物の積み下ろしや整備の効率などが良くなったと言われています。

 2つ目に、787の魅力でもある静粛性です。上空では、高度300m差で多くの航空機が同じルートを飛行しています。通常、コックピット内は、その航空機の風切り音やエンジン音がとても大きいため、すれ違う航空機のエンジン音を聞き取ることはできません。しかし、787はエンジンの形状や素材の改良により、機内の騒音が軽減されているため、耳を澄ませると、すれ違う航空機のエンジン音がかすかに聞こえるのです。皆さまもご搭乗の際は、きっと、静かな空間をご体感いただけることと思います。

 私が787の機長になってからまもなく2年が経ちます。今でも787の実力に驚かされている毎日です。

日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)