コックピット日記

「コックピット日記」は5人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。

Captain 158 「ファーストオフィサー」を目指して文=川添 剛(エンブラエル機長)

 新年度が始まり、夢への一歩を踏み出した方もいらっしゃるかと思います。
 私は去年の夏から、教官として「副操縦士昇格訓練」の業務に携わっています。パイロットへの夢に向かって一生懸命な訓練生の姿に、私自身が力をもらっている毎日です。今回は、エンブラエルの副操縦士になるための訓練についてお話しします。
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「副操縦士昇格訓練」は、通称「FOUG(=First Officer Up Grade)」と呼ばれています。私の所属するジェイ・エアでは、現在、自社養成パイロットの訓練は行っておらず、航空大学校などを卒業して、パイロットに必要なライセンスを既に取得している人を対象に訓練を行っています。
 訓練は、3ヵ月間の座学の後、延べ1年間のシミュレータ訓練と路線訓練になります。現在、ジェイ・エアのシミュレータ訓練は、静岡県と中国・珠海(ズーハイ)で行っています。この春、羽田にもエンブラエルのシミュレータが設置されることになり、今後はよりスムーズに訓練ができるようになります。

 シミュレータ訓練は、まず、「ブリッジ訓練」から始まります。これは、ここまでのライセンスの取得訓練にプロペラ機が使われているため、ジェット機の感覚を身に付けるための橋渡し訓練になります。次に「FFS(フルフライトシミュレータ)訓練」です。気象条件や滑走路状況などをシミュレータに設定し、あらゆる状況を想定して飛行訓練を繰り返します。この訓練と並行して「実機訓練」も始まります。ジェイ・エアの場合、中部国際空港で「タッチアンドゴー」と言われる離着陸の訓練を行います。
 全ての訓練を経て、国土交通省航空局の審査に合格すれば、晴れてエンブラエルの副操縦士です。名前に副とつくことから補佐役というイメージが強い副操縦士ですが、より良いフライトを築くためのチームの一員、「ファーストオフィサー」として欠くことのできない独立した重要な役職です。
 パイロットのオペレーションマニュアルには「指揮権の継承順位」という項目があります。「機長に不測の事態が生じた場合は、副操縦士に指揮権が継承される」。当たり前のことですが、私が訓練生の頃、この規定を学び副操縦士の仕事の重みを再認識しました。

 いざという時に、しっかりと指揮権を背負うことのできる人材を育てることが、FOUGの教官としての私の使命だと思っています。

日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)